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今年最後の

2007年12月29日 14:54

さて、我が社も今日で仕事納めです。
大掃除も一段落して、ようやくブログの更新(←本業w)です。


え~と、掲載中の【two hearts】なのですがね。ちと裏話をば。

私がモノを書くときは、いつも行き当たりばったりなのです。
小説なんかだと、これは結構厳しい制約なんですよね(←自分が悪いのだがw)
ちょっと前に「逆追い小説」ってやったじゃないですか。
あれなんてホントに苦しい。ラストから書くってのがあんなに大変だと思わなかった。

「だったら書かなきゃいーだろ!」って突っ込みはおいとくとして。
今回の【two hearts】も、当初の予定では5話完結(いつものパターン)のはずでした。
第1話、第2話の展開がなんとなく甘ったるいのはそのせいです。

不倫をテーマに扱う場合ってのは、書き方が2種類あるんですよね。
「ひたすら甘くする。」か「ひたすらドロドロにする。」かww
どちらがいい悪いってのはありませんね。好き嫌いもそれぞれだと思います。
ま、夢物語である以上は前者が、仮想的優越感を得るなら後者ってところでしょうか。

【two hearts】は当初のうちは前者で、第3話から後者に方向転換しました。
これといった理由は無いんですが、これまでに甘い物が多いこと、書いてるうちに珍しく感情移入したこと、などが転換理由です。
もちろん完全フィクションなので、登場する人物に特定のモデルはいません。(課長も私と全然違うw)

後から考えると、これが結構メンドクサイ作業なんですよね。
物語の途中でゴールがまったく別物になってしまいましたから。
そこで急遽、本編5話に外伝6話と総括1話を加えた12話構成にすることにしました。
1~5話が課長から見たストーリー。それに洋子と美香の角度を加えて、最後で〆。
なので残りは3話で終了ということになります。


その12話を年内に全部書き上げるつもりだったんですけどねぇ・・・
すみません。今年はここまでってことになりそうです。

途中で投げ出すのもなんですから、年明け(7日以降)に続きを書きます。
最終話は仕上げましたので、残りは美香編の2話。
「女性の心理」って男はこんな風に思ってるのかぁ~なんて感じで(?)
まだ何も考えてませんがねw


まったく更新されないブログにアクセスしていただける皆様。
本当にありがとうございます。
いつも同じ記事ばかりがトップで申し訳ありません。
来年こそ、更新頻度が上がるような気がしないでもなくもありませんw

彼女とも順調に過ごしています。
私はすっかり冷え性の彼女を温める湯たんぽの役目が定着しました。
少しでも長く同じ時間を過ごせるように。

気ままのんびり更新のココですが、来年もよろしくお願いいたします。


最後に、2008年が皆さまにとって良い年になりますように☆
今年一年、ありがとうございました。

                                     おわわ
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two hearts 【9】

2007年12月21日 15:11



ダージリン、アッサム、アールグレイ、セイロン、ニルギリ、ウバ・・・
葉の選別から煮出しの温度、時間、適した陶器、保存の方法。
森下美香の部屋の中には紅茶の本がずらりと並んでいる。

デパートに行けば、かならず紅茶売り場に立ち寄った。
次は何にしようか。この間の味はどうだったか。そうやって考えることが幸せだった。
気持ちが届かなくてもいい。届かないほうがいいのかもしれない。
今はただ、あの人が紅茶を飲む姿を想像していたい。


古い体質の会社だな。というのが最初の感想だった。
張り出されたグラフが壁を埋め尽くしている。サービス残業が当たり前の世界。
特に美香を辟易させたのは、女性のお茶当番制だった。

まるでそのために用意されたかのように、各グループに数人の女性が配置されている。
いずれも男連中と同一の条件で働く営業員だ。それなのに、お茶出しは女性の仕事。
美香が入社して4年。景気が悪いのか社風が悪いのか、新人は長続きしない。
美香の二つ下の女性がいるが、彼女が支店でも最年少だ。
お茶当番は二人で交代で行っていた。美香のほうが先輩にあたるのだが、たった二人でいがみ合ったところでメリットは少ない。

新任の課長がグループ長として配属されたのはそのころだった。
もちろん美香より年上だが、他のグループに比べて若いな。その程度の感想。
たまたまお茶当番だった美香がコーヒーを持っていった。

「あれ、ここはお茶なんか出るの?大変だね。」

「いつものことですから。」

「ありがとう。でも明日からは自分でやるよ。」

「はぁ。」 何を考えてるのかわからない人だった。

翌日、給湯室で課長がポットから湯を注いでいる。
マグカップを片手にデスクに戻ると、引き出しからティーバッグを取り出した。
報告書に目を通しながら、ティーバックを揺らしてる。
朝礼が始まり、行動予定の報告が終わるまで、マグカップはそのままだった。

「あの、課長。」

「ん?森下さんだったよね。どうした?」

「紅茶・・・」

「あっ!いけね。またやっちゃったよ。他のこと考えてると忘れちゃうんだよね。前もよく失敗したんだ。」

照れくさそうにティーバッグをごみ箱に入れ、色の濃くなった紅茶を飲み始めた。
前の支店で全社1位を達成したグループ長。ここに配属されたのは低迷する美香たちの支店のテコ入れという噂だった。
美香のグループ全体が戦々恐々としていた。恐怖政治という噂までたっていたのだから。

「コーヒーお嫌いなんですか。」

「うん。実は苦手なんだ。最初に言えばよかったよね。ごめん。」

「いえ、そんなことないですけど。」

昨日マグカップを片付けた時、たしかコーヒーは残ってなかった。
美香には何も言わず、コーヒーを捨てるようなこともしなかった。
今朝、一人で給湯室からお湯を注ぐ姿がよみがえる。
言葉にはできないが、ただなんとなく、人柄を見たような気がした。


仕事が終わり、駅ビルに入っている雑貨屋の前で立ち止まる。
紅茶の種類がこんなにあるなんて知らなかった。
味も、好みもわからないまま少し値段の高い物を選んだ。

家に帰って、その日買ってきた紅茶を一人で入れてみた。
立ち上る香りが美香を包む。あの人は驚くだろうか。

ふと、1年前を思い出した。
美香には数年付き合った男性がいたが、別れてちょうど1年近くになる。
別につらいとも思わなかったし、新しい恋人が欲しいわけでもなかった。
その男と一緒に結婚願望とも別れを告げてしまったようだ。

朝が待ち遠しい。
こんな気持ちになる自分が懐かしかった。
もう忘れてしまったのかと思っていた感覚。

その夜、マグカップに注がれた紅茶の夢を見た。


翌朝、美香はいつもより1時間ほど早く会社に到着した。
気分の高揚は続いていた。時間のかかる支度もスムーズに終わった。
いつもより時間がかかったことといえば、化粧くらい。

ロッカーで着替え、紅茶を片手に給湯室へ向かう。
さりげなく紅茶を置いておこうと思っていた。
不自然な感じにならないように。気持ちを悟られないように。


美香が給湯室の扉を開くと、そこに意外な人物がいた。

two hearts 【8】

2007年12月19日 14:00

『3』

木村俊輔との仲は急速に進展した。
彼が独身で、洋子の容姿も男を惹きつけるものだったことも多分に影響しているだろう。

木村との逢瀬は、もはや洋子の生活の中心となっていた。
仕事も手につかず、給料も下がり続けたが構わなかった。
木村と会って、ようやく自分が解放されたような、そんな気分だった。

とくに追加契約などの必要がなくても木村の会社に洋子は通う。
担当である課長と時間を共にすることも、木村に会い続ける手段の一つと思った。
そして、それほど時をおかずに、二人は深い関係を持つようになった。

二人は、少なくとも洋子にとっては真剣だった。
木村が二人の将来の話を出してきた時には戸惑いもあったが、それもすぐに消えた。
始めは夢とも思わなかった木村との生活が、すぐに手の届くところにあるような気がする。
今の洋子は、木村の気持ちに応えたかった。

洋子が一番恐れたのは夫の存在だった。
木村にはバツ一だと告げてある。彼の心をつなぎとめたい一心で。
送ってもらったマンションの前で、洋子はいつも木村を部屋に上げること拒んだ。


数ヶ月が過ぎたある日、酔いつぶれた洋子を木村は抱きかかえていた。

「ほら、家の前に着いたよ。大丈夫かい?」 木村の声が耳に優しい。

「うん、平気。バッグに鍵が入ってるから。」 

洋子はふたを開けるつもりがバッグを落としてしまう。
バッグの中身が街頭に照らされ、キーホルダーのついた鍵が光っていた。
木村はバッグの中身を拾い集め、鍵を片手にマンションに入っていく。

「もう大丈夫よ。ホントに。ありがとう。」

「そうもいかないだろ。とにかく水を飲んで、早く横になりな。」

マンションの扉が開け放たれる。冷たい室内の空気が、洋子の酔いを急速に醒ましていく。
ここはどこ?わたしの家?そんな・・・ダメ!

「へぇー、結婚してるんだ。今もね。」 初めて聞いた彼の冷たい声。

洋子は言葉が出なかった。これで終わり。何もかも。
一瞬の夢だった。またあの生活に逆戻り。もう、戻れないかもしれないけど。

「えっ!?」 突然、洋子の体が宙に浮いた。
酔った体の感覚はまだ元に戻らない。抱きかかえられたままベッドの上に放り出された。
木村が乱暴に服を脱がせていく。夫とだけ寝たベッドに木村と二人。
洋子はされるがまま、木村を受け入れた。体は木村を欲していた。激しく、強く。
眩しい光に気づきもせずに・・・


木村から連絡があったのは、3日後の夜のことだった。
あの日から言葉を交わしていない洋子は、喜んで電話に出る。

それが、破滅への電話だとも知らず。


「この間の写真が出来たからさ。見せてあげようと思って。」

「写真?なんのこと。」

「水野さんが自分の家のベッドで男に抱かれてる写真だよ。覚えてないのかい。」

木村は電話口で洋子を嘲笑うかのように薄く笑った。
必死に記憶をたどる。そういえばあの光。カメラのフラッシュだったんだ。
洋子が失態に愕然とする間もなく、木村が続ける。

「これさぁ、よく撮れてるのよ。旦那さんにも見せてあげたくて。」

「な、何言ってるの!やめてよそんなこと!」

「それをどうするかは、水野さん次第ってことなんだけど。」

「あなた、自分が何をしてるかわかってるの!」

「そうやって課長とも寝たんだろ、大したもんだよ水野さんは。」

「何?言ってる意味がわからないわ。」

「俺、今月給料ピンチでさぁ。ちょっと助けてもらいたいんだよね。」

「な・・・」 もう木村は洋子とは言わなかった。罠に落ちた自分。
いや、罠に落ちたのは洋子との結婚を信じた木村だったのかもしれない。
今となっては、もうどうでもいいことだが。

「わかったわ。どうすればいいの。」

「まずは10万ほど貸してくれない。あ、それと。」

「まだあるの?なに?」

「今週友達連れてくからさ、お宅でパーティしようよ。この間みたいに酒飲んで・・・」


唐突に携帯電話を切った後、ゴミ箱に放り込んだ。

その夜、洋子は夢を見た。
数人の男達が裸の洋子を取り囲んでいる。
腕も足も押さえられて身動きができない。
無理やり膝を開かれると、そこに笑った木村俊輔がいた。
見渡すと、洋子を取り押さえているのはすべて木村の顔だった・・・

洋子は飛び起きた。シーツまで汗で濡れている。


「アイツを殺さなきゃ。わたしを取り戻すために。」


two hearts 【7】

2007年12月17日 10:33

『2』

フロアに入ると仕切りの無い大きな空間が広がっている。
洋子は気圧されながらも中に入っていった。
簡単な受付を兼ねた内線電話が一つ置いてある。
アポイントは無い。思案を巡らせていると、ドアから男性社員が出てきた。

「あの、すみません。」

「はい。」

「わたし、この周辺でお世話になっている事務機器メーカーのものですが、御担当者の方は・・・」

少し舌足らずな言葉。潤んだ瞳。中途半端な物言い。
最初の関門はこれで突破できるだろう。出てきた彼の目を斜め下から見上げる。
途端、洋子の体に電流が走った。忘れていた感情が湧いてくる。

「ああ、申し訳ないけど課長は電話中みたい。ごめんね。」

「あ、いえ、課長さんが御担当なんですね。少し待っててもよろしいでしょうか。」

「別に構いませんよ。内線で呼んでくれれば大丈夫だと思いますから。」

「ありがとうございます。ほんとに。」

頬が赤く染まってないか心配だった。
慌ててまわりを見渡し、ガラスに写った自分の顔を見つめた。
心臓の鼓動が、耳の奥で大きな音を立てている。
わたし、どうしたんだろう。こんな気持ちになるなんて。

5分ほどして、教えてもらった内線番号をプッシュする。
電話口に出た男はわりと若そうだ。肝心の契約はオヤジの方がたやすいのに。
課長と名乗った男から名刺を受け取った。

新人らしく、たどたどしく。
何度も繰り返すうちに自然に身についたもの。
洋子は意識せずに、時には本心と錯覚するほど喜怒哀楽を表現した。

「なぜダメなんですか。」

そして最後に悲しく、いや、悲しそうに帰ればいい。
あとは餌に獲物がかかるのを待つだけ。勝負をかけるのは次の訪問だ。
冷静に計算しつつも、もう一人の自分は別の事を考えていた。
別の男に心を奪われる自分から目を背けて、その会社を後にした。


律儀に言いつけを守った。という印象は重要だった。
来ない。と思った相手が来ることに意外性がある。そしてそれは悪い方向には向かない。
断るつもりなら最初から言うだろうし、相手が迷ったということは可能性がある証拠。
前回とほぼ同じ時刻に訪問したことには、他に意味があったのだが。

洋子はいつもの再訪問のパターンを頭に呼び起こす。
今日はなぜかそれがうまくできない。頭を占めているのは、あの男のことだった。
会社のドアをくぐり、いつもの内線電話の前に立つ。
課長のダイアルの下にたくさんの名前が書いてある。
考えても仕方の無いことだ。洋子は男の名前すら知らないのだから。
その時、ドアが開いた。映像が1週間前と重なる。

「あれ。この間もお会いしましたよね。」

「覚えててくれたんですか。嬉しい。」

「うまくいきました?課長との話。」

「それが、今日もう一度お願いに来たんです。」

「そっかあ、頑張ってくださいね。」

「はい。ありがとうございます。 あの・・・名刺、いただけますか?」

「あ、僕のですか。はいどうぞ。」

名刺を受け取ると、洋子は自分の名刺を差し出した。
彼の目を見て渡すことができなかった。

「それと、課長は今日留守ですよ。戻りは夕方になるそうです。」

「そうなんですか。じゃあもう一枚。机に置いていただけますか。」

「わかりました。ちゃんと言っておきますね。」

「また伺います。」


男の名は、木村俊輔といった。
洋子は担当がいないことに感謝した。彼に会いにもう一度来られることにも。
会社を出る時、大阪の夫のことは頭になかった。
罪悪感を感じるよりずっと強く、彼のことを想っていた。


two hearts 【6】

2007年12月14日 09:39

『1』

明るく、颯爽としたイメージ。

オフィス街を闊歩して歩く姿を自分と重ね合わせていた。
あの当時は、夢と希望だけで気持ちを奮い立たせることができた。

いつからこうなったんだろう。
太陽に照らされ、輝いて見えたオフィスビル群。
そのガラスの中には無関心と不平等と、果てしなき競争が飲み込まれている。

ほとんど氷の溶けかかったアイスコーヒーをストローでかき回しながら、水野洋子はそんなことを考えていた。
オフィスレディは学生の頃からのあこがれの仕事だった。格好がよくて、理知的で、スマートで。
雑誌に出てくる彼女達はお洒落で、洋子にとって美の象徴のようだった。

ところが、現実はまったく反対の世界が口をあけている。
給料は歳を重ねてもほとんど上がらない。それでもノルマに追われる日々。
考課査定は厳しい。洋子のような女性社員はほとんどが契約社員という立場。
ノルマを達成するため自腹を切っている者までいるらしい。
最低基準の成績を下回れば、営業手当がなくなるためだ。
営業手当を失えば、月の手取りは10万円を大きく下回ってしまう。


結婚願望が強かったわけじゃない。
それでも洋子は仕事から逃げるために結婚という選択をした。
今にして思えば、早すぎる決断だったのかもしれない。

同期入社の夫とは配属された支店が同じだった。ただそれだけの理由。
二人は何となく恋愛し、時間とともに新鮮さを失い、半ば決められたように結婚した。
幸せな気持ちになんてなれなかった。仕事を辞められるというのが唯一の救いだった。

誤算。
いつの間にかそんな言葉を使うようになっていた。
時の流れは洋子の思惑をあざ笑うかのように変化を始める。
中堅の事務機器メーカーだった洋子の会社は、ITバブル崩壊とともに急速に市場を縮小していった。
厳然としたノルマ。その達成率を基準とした給与体系。会社が変化に追従できない。
夫の給料は月毎に減っていった。賞与ももちろんカットの対象となる。
貯金を出し尽くし、長期のローンを組んだ中古マンションの支払いがやっとの状態。

洋子が夫に復職を提案したのは、退職後1年が過ぎた頃だった。
子供を作る予定も無いし、その余裕も無い。

何もしないというのが洋子にとって一番の苦痛でもあった。
それでも最後に気持ちの後押しをしたのは、夫の転勤が決まったからだ。
大阪支社への転勤。断れば未来は無い。選択の余地はなかった。

夫は二人で大阪へ行くことを望んだ。
洋子としては、マンションを他人に賃貸するというのに抵抗感がある。
それに、知らぬ土地で孤独を味わうのは恐怖だった。
自分の城を他人に汚されたくない。子供のような意地を張って東京に残った。
夫はさほどの抵抗をするわけでもなく、単身大阪にアパートを借りている。

夫の大阪行きで、洋子の復職はスムーズに進んだ。
形式だけの面接があり、即戦力を望む会社の意向と、洋子の実績が合致した。


会社で最初に驚いたのは、当時はまったくいなかった派遣社員の数だった。
聞けば女性全体の7割近くを占めているという。
3ヶ月毎の契約更新をしていく彼女達は入れ替わりも激しく、また会社も相応の扱いをしている。
要するに使い捨てだ。代わりはいくらでもいるのだから。

会社の対応は契約社員とて派遣社員となんら変わらなかった。
相変わらずのノルマ主義。それを達成するものだけが人としての権利を与えられる。
そう、ここには人権なんて存在していない。あるのは数字だけ。

失った1年のブランクは長かった。洋子の数字はまったく伸びない。
年齢よりもかなり若く見られる洋子は、以前も新人を装って営業をしていた。
派遣社員の中には若い女性も多いが、洋子は自分の容姿に自信があった。
だから時には泣き落としもするし、どんな演技でもする。
担当者がその気なら一緒に食事にも行くし、どうしても必要なら寝ることもある。

特別な感情なんて無い。男なんて少し色気を見せれば誰もが甘くなる。


再入社して3ヶ月ほど経った頃だろうか。
とある営業会社に飛び込んだ。

あーあー

2007年12月12日 23:28

まったく。
風邪引いて熱ある上に、忘年会から戻ってきました。

彼女に何度か電話してもすべて話し中。
かからないことをメールしたら逆に「そんなわけない!」って責められる始末。

挙げ句に「誰かと一緒なの?」ときたもんだ。
明日会う約束の返事もしないで。
取引先とくだらねー酒飲んでたっつーの!!!


どーせ私が悪いんですよ。
どこにいるか信用されてないようなので会社で記事書いてます。
だいたい電話が話し中の方がよっぽど怪しくね?「プープー」ですよ!?


疲れが倍増したわ。

帰って寝ます。

two hearts 【5】

2007年12月12日 11:34

【5】

何が何だかわからぬまま、二つの小箱とともにデスクを閉めた。
その音が、まるで判決を下された被告のような気分にさせる。
たった一度のことなのに。それがどうして。なぜ。なんのために。

渦巻く疑問に何一つ答えが出ない。
社内はほとんどの営業員が出払っていて、他グループの課長が一人と事務の数人がいるだけ。
疑心暗鬼にかられながら、あてもない想像を巡らす。
いくら考えても答えは出なかった。そっとデスクを開くと、写真はそこに存在している。現実として。

夕方になり、グループの営業員も会社に戻りはじめた。
それぞれの顔を見渡すが、これといって意味ありげな目線を投げてくる人間もいない。
入口のドアが開くたびに胸が締め付けられるようだった。
結局その日は終業まで何事も起こらず、写真をデスクに埋もれたファイルの中に押し込み、小箱2つをバッグに入れて会社を後にした。

翌朝、1通のメールが届いていた。
『お話ししたいことがあります。』 それだけの文章。差出人は森下美香だった。
話の内容は明白だった。昨日の写真の件。まさか森下とは・・・
朝の慌ただしさでは話をする余裕は無い。当の本人もそのつもりのようで、私と目を合わせることなく営業に出かけて行った。

森下が外回りから戻ってきたのは19時近かった。いつもよりかなり遅い時間だ。
会社に戻ってからの残務整理には2時間近くかかる。翌日の見積、今日の報告書、数字の進捗予定。
森下が最後の報告書を私の所へ持ってきた時には22時になろうとしていた。
社内にはほとんど人が残っていない。私のグループは、私と森下だけになった。

「メールの件だけど。」 私は耐え切れず森下に尋ねた。

「少し付き合ってもらえませんか。ここでは話せませんから。」

二人で会社を出て、駅前の小料理屋に入った。
コートを着ていても寒さが伝わってくる。寒さを感じるのは気温だけではないかもしれないが。
瓶ビールを1本頼み、向かい合って座る森下のグラスにビールを注いだ。

「すみません。突然。」 先に口を開いたのは森下だった。

「何の話か、だいたい想像はついてる。できればありのまま聞かせて欲しい。」

「一昨日のことです。自分の会社のPCの調子が悪くて、データを木村さんのPCから打ち出そうとしたんです。そしたら、デスクトップに『写真』ってフォルダがあって、わたし興味本位で見ちゃったんです。課長とあの女の人の写真でした。わたし、怖くなっちゃって・・・」

彼女の言うことが本当なら、木村の仕業ということになる。
ただ、それが本当なのかどうかを調べる必要はありそうだ。
そんなことを考えていた時、森下が一枚のコピー用紙を取り出した。

「これ、同じフォルダに入っていたんです。木村さんには悪いけど印刷してきました。」

森下から手渡された用紙を読み進めるうちに、全身から血の気が引いた。
その内容は、一つが部長に宛てた私の告発文であり、もう一つが私の妻宛のものだった。
どちらにも別添えの写真を見るように書いてある。木村にとっては周到に用意されたものだろう。

「なぜわかったんだろう。」 正直な感想が口をついて出た。

「課長、あの人に会う日は上の空でしたもん。わたしでもわかりますよ。」 森下がため息とともに笑う。

「そうか、知らぬは自分ひとりか。鈍感なヤツだな、私は。」

「そう。課長は鈍感です。わたしの気持ちにも少しも気づかない。」

「えっ。」 ふと目を上げた時、ちょうど森下の目から涙が一つこぼれた。

「本当はわたし、この写真がある事を知ったのは1週間前のことなんです。課長が帰ったあと、木村さんにこのことを問い詰めました。そしたら木村さんが言うんです。『これで課長もおしまいだ、次期課長の席に座るのは俺だ』って。わたし必死で止めました。でも木村さんは知っていた。わたしが課長を好きなことを。それで取引に応じたんです。」

「取引?何の話だ!」 小さな居酒屋に声が響く、幸い私たち以外に客はいない。

「黙っててやるかわりに、わたしと、一度でいいからって。それでわたし・・・」

「あのやろう!」 すべては自分の至らなさのせいだった。やり場の無い怒り。無知、無力。

「ごめんなさい。こんなことになるなんて。でもわたし、課長のいない会社なら、いる意味が無い。」

言葉を失った。これほど己の情けなさを思い知らされることもないだろう。
何も気づかなかった。自分ひとりが浮かれていた。
木村に抱かれた時、森下はどんな気持ちだったんだろう。握った拳に爪が食い込んだ。

「このことは誰にも話すなよ。」 森下の目からは涙がとめどなくあふれている。

そっと肩に触れたとき、森下の抑えていた感情が爆発した。テーブルに伏せたまま声を上げて泣きはじめる。
私は彼女に何をしてやれるんだろう。一つの決意が胸に湧いてきた。


「木村を生かしてはおけない。」 私のためにも、森下のためにも。


森下の腕をとり、店を出た。
外の寒さを、いつの間にか感じなくなっていた。

two hearts 【4】

2007年12月10日 17:16

【4】

頭の中はすでに真っ白だった。
考えていたこと、話そうとしたこと、すべてが消えている。
デスクの電話に外線着信のランプが点滅している。
森下と目を合わせないように、ランプを押し、受話器を取り上げた。

「お電話代わりました。」

「先日お邪魔した水野と申します。突然すみません。」

「あぁ、先日はどうも。」 声の震えが相手に伝わってないか。

「ご検討いただいて、いかがと思いまして。すみません。」

恐縮する水野洋子の顔が浮かんでくるようだ。
すみません。を連呼する彼女の姿、それと裏腹の強固な意志。
彼女の気持に応えてやりたい。男の本能がそう言っていた。

「あ、あの件ね。前向きに検討するからまた寄ってくれないかな。」

「ほんとですか!嬉しい。ありがとうございます。」

「じゃ、後日。」

「すみません。ありがとうございます。ありがとうございます。」


電話を切ってしばらくしても彼女の声が残っていた。
言葉では言い表せない高揚感が立ち上ってくる。

「なにニヤけてんですか!」 森下がこちらも見ずに言う。

「ニヤけてねーだろ。だいたい・・・」

「はいはい。どうせあたしはあんなに美人じゃありませんよ。」

「なんだ、お前嫉妬してんの?」

「そういうのセクハラですから。行ってきます。」

水野洋子の再訪は1週間後だった。カレンダーに小さく赤い点を打つ。
7日間のカウントダウンの始まり。1日が1ヶ月にも感じられた。


応接室で待っていた彼女は、私を見るなり恐縮して席を立ち上がった。
薄いピンクのワンピース。小さなイヤリングと、踵の低い黒のヒール。
肩より少し長い髪を後ろで束ねている。化粧は薄いが、大きな瞳が印象的だ。

「すみません、貴重なお時間を。」

「いえいえ、こちらこそわざわざ出向いてもらって。」

「それで・・・」 探るような目が向いたと思うと、すぐに彼女はうつむいた。

「今、社内を調整中でね。近日中に答えが出ると思うんだけど。」

実のところ、社内稟議はすでに通っていた。
あの電話のあとすぐに書類を作成し、上層部の許可を取り付けたのだ。
ここで契約するのは簡単なこと。だが、彼女とはもう会えなくなる。

イチかバチか。1週間考えた末の言葉をぶつけることにした。

「実はあと一歩なんだ。そこであなたにもすこし演技をしてもらいたい。」

「演技、ですか?どんなことでしょう。」

「さすがにココでは話せない。どう、お昼まだなら一緒に。」

「あ、はい。いいんですか?ご一緒しても。」

気分は有頂天だった。万が一、彼女が断ってきても私は失うものがない。
彼女が断れないことも承知の上だったが。
彼女との食事の間、何を話したのかあまり記憶が無い。

その後、『打ち合わせ』と称する食事は数回続き、昼食はやがて夕食になった。
半年の時間の中で、たった一度、彼女を抱いた。
家庭のことは頭の中に無かった。あるのはベッドに横たわる彼女の肢体だけ。
彼女はそれが当たり前のように私を受け入れた。今でも彼女の上ずった声がすぐそこで聞こえる。

私は他グループの課長クラスを説得し、彼女の数字に貢献した。
まるで、そうすることが彼女を繋ぎとめる唯一の方法のように。

クリスマスが近くなり、私は彼女にイヤリングを買った。
罪悪感を消すために妻へのプレゼントも別の宝飾店で買ったが、それを身につけた妻の姿を想像することができなかった。

12月の夜は早い。会社に戻る頃には空は真っ暗になっていた。
社内で目に付かないように、二つの小さな包みをデスクにしまおうとした瞬間。


体が凍りついた。


デスクに入っていたのは、写真だった。
水野洋子と私がホテルを出る瞬間を捉えた、数枚の写真が無造作に入っていた。

two hearts 【3】

2007年12月07日 21:05

【3】

夕食もうわの空だった。
かけてもいない電話に怯えている。
食事を終え、風呂に入りながらあれこれ想像を巡らせていた。
留守にして申し訳ないから電話をしただけ。自分に言い聞かせる。
水野洋子だって、近くに来たから寄っただけだろうから。

出勤時間は朝の8時。
全体の朝礼が8時半から始まるので、それまでは今日の準備をすることになっている。
私のグループは私を含め6人で構成されていて、社内には同様のグループが他に3組存在している。もちろん、すべてがライバルということになる。
営業の会社である以上、グラフからは逃れられないわけだが、私のグループの今月の成績は良かった。

中でもグループの成績を支えているのが木村と森下だった。
木村俊輔は都心の支店から先日異動になったばかりの7年目。
年次では私の5期下にあたる。次期グループ長に一番近いのが木村だろう。
前の支店でも成績はよかったようだ。快活な物言いと明るい態度は同性にも好感がある。

森下美香はグループ中ただ一人の女性。たしか木村と同じ歳だから三十ちょうどだったはず。
他のグループには数人の女性がいるのだが、先日退職した女性の後釜が木村だったのだ。
私はバランスを気にしていた。戦力としてはともかく、森下自信が気後れしては意味がない。
ところが当の本人はそれを気にするでもなく今月はグループトップの数字を叩き出している。
しかも先月もトップの数字だったことから、心配は私の杞憂だったのだろう。

朝は他にも本社提出の書類や、在庫状況の確認、事務方との調整など、いくら時間があっても足りない。
いつもなら時計に追い立てられているはずなのに、今日はなぜか時間の進みが遅い。
まるで時計が止まっているようだ。さっき見上げた壁掛時計の長針はまだ2分と進んでいない。

私の頭はすでに自分の会社にはなかった。
水野洋子の会社でもおそらく似たような風景が広がっているだろう。
問題は、彼女は外回りに出掛けてしまう。ということだった。
出かけるのは9時か、9時半か。10時というのは希望的過ぎるか。

朝礼が終わると朝会が各グループで行われる。
そこで今日の行動予定や見込み客の報告、今月の成績見込みなどを発表する。
8時40分に朝礼が終わって、朝会が15分なら8時55分。
それから各営業が外出するのに20分程度の時間がかかる。

私は水野洋子の会社に電話することをためらっていた。
あれほど考えた言葉たちが電話を目の前にすると、ことごとく目の前から消え失せる。
部下に見られることも避けたかった。動揺を悟られるのは気持ちのいいものではない。

8時50分。朝会が終わった。
私からの発言がほとんどなかったため、いつもより早く終わった格好だ。
森下が紅茶を淹れてきた。彼女が淹れる紅茶はうまい。
他のグループは女性の交代制だが、うちでは森下が専属になってしまっている。
辞めてしまった女性と比較するのは失礼だが、味に差があるように思う。
声をかける間もなく、森下は他のメンバーにコーヒーを配っている。
それから30分後。木村を最後に全員が営業へと出かけて行った。


キャビネットからバインダーを取り出す。
何気なくめくる動作で目的のページに行き着いた。
2枚の名刺のうちの1枚を取り出す。何百回と見たようなロゴと名前。

デスクの受話器を取り上げ、ダイアルを押す。

最後の数字を押す直前で受話器を置いた。
水野洋子に電話をして、何の話をするのだ。
物品の購入は稟議書を書けば何とかなる。そこまでする必要があるのか。
弱気な気持ちになるときりがない。思えばずっとこんな性格だった。


「どうしました?」 顔を上げると森下がいた。

「なんだお前、まだいたのか。」

「もう、『まだ』は失礼でしょー!見積り打ち出すの忘れちゃって。」

「そうか、例の案件か。それがまとまれば今月もトップだな。」

「だといいんですけどねー。」 屈託のない笑顔で笑っている。


内心は穏やかではなかった。
時計は9時40分を指している。
いくら外出の遅い営業でも、この時間というのはさすがに考えにくい。

明日にするか。別に今日でなくてはいけない理由はない。
逃げ道が見つかった私は、すぐにその考えを受け入れた。


「課長、お電話です。」 森下が受話器を塞ぎながら顔をこちらに向ける。

「ん?誰?」

「水野さんという女性からですが。」

two hearts 【2】

2007年12月04日 22:46

【2】
正確には彼女が来たらしい、ということだった。
デスクの上に彼女の名刺が置かれていた。
椅子に腰掛けた途端、ある期待を胸に名刺を裏返した。
裏にも表にも、何も書かれてはいなかった。

ブルーの星をあしらった会社のロゴ。
「営業支援本部 水野洋子」と書かれた名刺。
会社の所在地と連絡先、裏側にはローマ字で同じ内容。

水野洋子。
ありふれた名前だ。いや、今にしては洋子という名はめずらしいのか。
どこにでもいる名前でも、ひとたび特別な意味を持てば世界で一つのものとなる。

「水野洋子・・・か。」 声にならない声。

自分でもうまく理解することができない。
彼女を私のものにしたいという気持ちと、すぐにそれを打ち消す気持ち。
連絡を待っているはずだという強い気持ちの後から、なぜか湧いてくる恐怖心。
2枚の名刺が二つの目となって、私を見上げてくる。

「・・・ですか?」

ガタン。という物音が同時に起こった。
気がつけば私の膝がデスクの引き出しにぶつかった音だった。
冷静を保とうとすればするほど、動作はぎこちなくなっていく。
慌ててバインダーを閉じると、デスクの前に立つ人物に焦点をあわせた。

「どうした?」

「いや、この間の報告書なんですけど、これでいいですか?」

先日配転になったばかりの木村だった。
私のグループでは5人目の部下ということになる。
彼自身にしても部署が変わったこともあり、何かと苦労しているらしい。
歳の差はそれほどでもないが、彼の方が活力に富んでいる印象がある。
水野洋子よりも少し年下か。そんな想像をする自分にまず驚いた。

「あ、ああ。ちょっと明日まで預かってもいいかな。」

「お願いします。」

名刺の気配を悟られたかどうかをまず心配した。
ただ見てただけ。気恥ずかしさを隠せず、自分への言い訳が口をつく。
結局木村は振り返ることもなく自分のデスクに戻っていった。
安堵感とともに2枚の名刺は重ねられたままバインダーにおさまることになった。
それぞれの名刺には、今日と、1週間前の日付が書き込まれている。

多少の残業があったので、会社を出たのは20時近かった。
たまたま職場に顔を出した同僚に誘われたが、今日は気乗りせず真っ直ぐ帰ることにした。
1時間の帰り時間の40分ほどを、水野洋子のために費やした。

彼女は今日、何のためにあらわれたのだろう。
何も話さず帰ったのだろうか。追い返されたのだろうか。
私の不在を知った彼女はどう思ったのだろう。

彼女が私に特別な気持ちを持っていないことくらいわかっている。
それでも思考が止められない。自分と闘う、もう一人の自分。
それはつまり、彼女の存在が特別になっていることの証明でもあった。


明日、電話してみよう。
あくまで商品の打合せのために。特に急ぐこともない。
自分への言い訳が、また一つ増えた。

自宅の前で小さな決心をして、玄関を開いた。
今夜は焼き魚らしい。靴を脱ぎながら頭を切り替える。
一つ深呼吸をした。気づかれないように。

自分の気持に気づかないように。

two hearts 【1】

2007年12月01日 15:31

【1】

店員の女性の目が自然と手元に向かっていた。
私は、あえて視線に気づかぬように。
好奇の目に照らされたまま、会計を済ませ店を出た。

手元には二つの包み。
それぞれ行き先の違う荷物。
二つの顔が交錯する。


彼女と出会ったのは半年ほど前。
私の会社に営業に来たのがきっかけだった。
何を売りに来たのか。それすらよく理解できない。
外回りを始めたばかりらしい彼女は、必死に何かの商品をすすめていた。

新人の営業か。上司が外で待ってるのかな。
彼女の言葉を半分も聞かず、そんなことを考えていた。

「いかがでしょうか」

ふと我に帰ると、うつむいたまま説明を終えたらしい彼女が小声を出した。
手元にはしわになったパンフレットが握られている。
よほど断られてきたのだろう、すでに半分あきらめているようにも感じる。

こりゃ営業に向かないな。早いとこ別の仕事を探したほうがいい。
私はまた余計な想像をめぐらせる。
申し訳ないがここは引き取ってもらおう。

「なぜダメなんですか」

少なからず驚いて私は彼女の顔を見つめた。
責めるような二つの目が、まっすぐ私を射抜いてる。

「ダメとは言ってない。まだ何も話してないよ。」

胸のうちを透かされたようでいい気はしなかったが、態度に出すわけにもいかない。
すると彼女の目の勢いが、時間とともに自信をなくしていく。
ゆっくりと、彼女はまたうつむいた。

「すみません。失礼します。」

涙をこぼしてこそいないが、悔しさは手の震えで伝わった。
思ったより負けず嫌いなんだな。コツさえ掴めば向いてる仕事かもしれない。
私の思考はまた迷走した。売れたことはあるんだろうか。あと何件回るんだろうか。

「ノルマ大変なの?」

「はい。」

素直に認めるところが彼女らしい。
その彼女「らしさ」は後になって知ったことだが。

「検討するから近くに来たら寄ってみてよ。」

彼女に特別な感情を持ったわけではなかった。
それほど歳の離れていない女性を、強引に追い返すほど男は強くない。
それが、無視できない容姿であればなおさら。

パンフレットとともに置かれた彼女の名刺。
それを手に持ったまま自分のデスクに戻る。
キャビネットから名刺用のバインダーを取り出して、空白のページを探した。
アルバムのようになった空き場所に彼女の名刺を差し込む。
一瞬の間があってそれを再び抜き出し、卓上カレンダーの前に立てた。


別に待ってるわけじゃない。
もう来ないことくらいわかってる。
たとえ彼女がもう一度あらわれても、私はどうすることもできないじゃないか。


あきれたものだ。
私は必死になって私自身を否定しようとしている。
いくら言葉で取り繕っても、垣間見えた本心は隠しようがない。
カレンダーに立てかけた名刺を、もう一度バインダーに戻した。
自分にできる、精一杯の自分への抵抗。


彼女が再びあらわれたのは、ちょうど1週間後のことだった。

時計はまだ31日

2007年12月01日 14:17

いや~まいった。
あっという間に12月ですね。師走ですよ。そりゃ師も走りますよ。
だいたいお前(師)がジタバタしてどうするよ?って突っ込みも忘れるくらい忙しい。

ここんとこどうも街歩いてて調子が出ない。
無駄に続く忘年会+風邪引いて熱ある+カップルがウザイの三重苦なのです。
(↑基本、自分のことは棚に上げる性格。)

んでもって、たまの土曜日。
ブログもずっとサボってるので、たまにはマジメに書きますか。


ちなみに。
現在、38℃近い熱があると思われます。
体温計を見ると急に具合悪くなりそうなので計ってませんが。
夢心地で記事書いてるので内容について深く突っ込まないように!

先にこういうこと書くと、突っ込み恐れてるみたいだなww



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